鈴木光司さんの逝去に寄せて

2026年5月8日、鈴木光司さんが亡くなられました。

「リング」「螺旋」「ループ」の三部作、そして映画・ドラマ・ゲームへの展開、さらにはハリウッドリメイクを通じて、 鈴木さんはジャパニーズホラーというジャンルを世界に売り出してくれたと思っています。

今この記事を書きながら、大学時代に友人から「絶対に読んで」と手渡された文庫本のことを思い出しています。 あのときの高揚感と恐怖を、改めて言葉にしておきたくて、今回この記事を書くことにしました。

三部作の概要

鈴木光司の『リング』シリーズは、第1作『リング』(1991年)、第2作『螺旋』(1995年)、第3作『ループ』(1998年)で構成される三部作です。

それぞれの作品でジャンルが大きく異なると感じたのを記憶しています。 個人的には、ホラー→サスペンス→SF、という流れだったかなと。 この変化こそが本シリーズ最大の特徴ではあると思うのですが、読む人によっては困惑したり、期待外れと感じる部分でもあります。

私は当時大学生で、周りでも数人読んでいたのですが、ループが期待外れという評価が多かったです。

第1作『リング』あらすじと感想 ── ジャンル:ホラー

フリーライターの浅川和行は、若者4人が同時に謎の死を遂げた事件を取材する中で、「見た者が1週間後に死ぬ」という呪いのビデオテープの存在に行き着きます。

自らも視聴してしまった浅川は、タイムリミットまでの1週間で呪いの解明に挑みます。謎の映像に映る少女・貞子の正体とは。そして呪いを解く方法はあるのか。

大学時代、本好きな友人から「これ怖いで、読んでみ」と渡されたのがこの一冊でした。当時バイトのために片道原付30分の田舎道を走っていたのですが、怖くて仕方なかったのを思い出します。 正直、成人になってるのにダサいなと考えつつも、怖いんだから仕方ない。友人達もみなお風呂に入るのが怖いとか夜中にコンビニに行けないとか言っていたのを思い出します。

映画版と比べると、貞子のイメージがまったく異なります。映画の「白い服に長い黒髪」というビジュアルは映画オリジナルの演出で、原作の貞子はミステリアスな美しさを持つ人物として描かれています。

ホラーとしての恐怖描写はもちろんありますが、それ以上に「呪いの仕組みを論理的に解明しようとする主人公の姿」に引き込まれました。

ラストもしっかり呪いの理由も解明され、納得させられたのを記憶しています。

第2作『螺旋』あらすじと感想 ── ジャンル:サスペンス

『リング』の直後の物語。法医学者の安藤が、不可解な状況で死亡した友人・浅川の解剖を担当するところから始まります。

ここから物語のジャンルが変化します。呪いのビデオの謎が科学的な視点から解き明かされていく、 医学サスペンスとしての色が強くなります。ホラーから地続きの恐怖ではなく、「なぜそうなるのか」を追い続けるスリルが主軸になっています。

友人に勧められて第1作を読み終えた勢いで、すぐにこの第2作も読みました。サスペンスは元々大好物だったので、 読み進めるうちに「なるほど、こういう方向に展開するのか」と引き込まれていきました。第1作の恐怖が頭に残っている状態で読むと、サスペンスとしての緊張感がより増します。

個人的には、純粋なサスペンス作品として楽しめました。しかも第一作とも完全につながっていて、第一作の完成度が第二作を読むことでさらに上がるというとんでもない作品だったと記憶しています。

第3作『ループ』あらすじと感想 ── ジャンル:SF

3作目は舞台もジャンルも大きく変わります。世界中でガンが急増している「転移性ヒトガンウイルス」が蔓延する近未来が舞台です。

主人公は二見馨という青年。父がガンウイルスに感染したことをきっかけに、謎のウイルスの発生源を追ってアメリカへと向かいます。そこで彼が辿り着いた真実は、第1作・第2作の「リング」と「貞子」の正体を根底から覆すものでした。

……正直に言います。この第3作、がっかりしました。

第1作・第2作を読んでからの数年間、『ループ』の刊行を心待ちにしていました。発売日に書店に走って、その日のうちに読み始めた記憶があります。 ところが読み進めていくにつれ、「まっ・・・まさか・・・その流れやめて・・・うわ・・・・」となりました。

SFとしての構想は面白いとは思います。ネタバレになるので詳細は書けませんが、「小説という媒体でしか表現できないトリック」がラストに仕掛けられているのも事実です。 期待が大きかった分だけ、落差も大きかった、というのが正直なところでした。

しかも2026年になってから考えると、当時にその発想をするというのはまだITも発展していなかったご時世ですごいことなんだと思います。惜しむらくは、私も友人も理系でITバリバリだったのが原因だったのかな・・・と。

三部作を通した個人的な感想

これまでに読んできたホラー小説で、心からの恐怖を感じたのは(読んでる年齢が違うのもあると思いますが)、「リング」、「黒い家」(こちらは何れ別の記事で触れたいと思います)の2作品です。

そのリングへの熱も3冊目も読んだ直後は冷めてました。 しかしながら、3冊を通して読むと、作者が最初からこのゴールを見据えていたのだということは伝わってきました。ただ、漫画の夢オチと同様にやって欲しくないオチはあるんですよ。

しかし、改めてこのシリーズを振り返ると、「ジャパニーズホラー」という概念を日本から世界へ!功績の大きさを実感します。

1990年代はバブルが弾け、経済的に苦しい時代だったと思います。しかし、だからこそ漫画、アニメ、ゲーム、小説、音楽、ほかといった業界が 成熟し世界へ羽ばたいていった期間でもあったのだと、今だからこそ思えるのです。

『リング』シリーズは、映画、ドラマ、ゲーム、コミックス……世の中を席巻するほどのホラーブームを生み出したこと、そして今もなお世界各地でそのDNA(リングっぽいですか?w)が受け継がれていること。 「誰でも知ってる」それは本当に偉大な仕事だったと思います。

改めて、鈴木光司さん、本当にありがとうございました!

「映画版のリングは知っている」という方こそ、原作三部作を読んでみてほしい。第3作での自分の感想がどうなるかも含めて、きっと予想外の読書体験になります。

鈴木光司さんへ感謝と追悼の思い画像

こんな人におすすめ

読み終わって、この本(シリーズ)は以下のような方にお勧めかな?と思います。

  • 映画版のリングが好きで、原作も気になっていた人
  • ホラー、サスペンス、SFのジャンルを楽しめる人
  • 3冊通して一つの大きな謎を解くのが好きな人
  • 鈴木光司さんの作品を追悼として手に取りたい人